2019年9月26日木曜日

人間らしい仕事をするより道は無し

人類が「機械に支配される時代」に漠然と恐怖を抱くようになってずいぶん経ちますが、AIなるものが我々一般人にも知られるようにり、その恐怖もいよいよ現実味を帯びてきました。

最近、ワタシが使っている動画ソフト「Davinci Resolve」にもAIのエンジンが搭載され、動画のレタッチも加速度的にグイグイ進化しています。

怖い怖いと言いつつ、ワタシ自身も緩やかに、しかし確実にAI漬けになっております。その最たるものが「photoshop」。

初めて知った時からずっと魔法のツールであり続けたフォトショでありますゆえ、軽微な進化にいちいち驚くことなくこんにちまで過ごしてきました。

例えばいつの間にやら使うようになった「パッチツール


左目の下あたりの諸々を、


こんな感じで消します。

以前はこういったシミ等の補正は「スタンプツール」で行っていました。パッチツールもスタンプツールも、比較的きれいな近隣の肌情報を拾って(以下サンプリング)補正する場所にかぶせるのは一緒なのですが、パッチツールはその境界線を計算して目立たなくしてくれます。


対してスタンプツールは、消したい肌の場所とサンプリングした部分の境界線を単にぼかすだけなので、早々に肌のキメが崩れてしまいます。


特に、目の下のようにシワとクマが両方あるような場合、クマではないところからサンプリングしてしまうと、修正したところが不自然に明るくなってしまいます。

そしてあれこれやっているうちにだんだん目がマヒしてきて歯止めが効かなくなり・・


必要な部分も「暗い」「黒い」というだけで塗りつぶしてしまい、最終的には目鼻口以外は真っ白・・なんてことも!


スタンプツールは簡単に肌のトラブルを修正できるツールですが、顔の陰影やトラブルなど、どの部分を消してどの部分を残すか?という点においてはそこそこの知識が必要でした。

だからメイクや顔の知識を持った人間がレタッチ業務をすべきだと思ったのです。

今はその部分がどんどん簡単になり、自動化が進んでいます。
ワタシがパソコンを始めた2000年前後あたりの時代には、2007~10年あたりの状況にはなるんだろうな、とは思っていましたが、さすがに普通の女の子が当たり前のようにレタッチするような時代が来ることは予測できなかったです。

まだまだ人間の感性が入り込む余地はありますが、よく考えてみるとシミが出来る場所(特に肝斑)などはだいたい決まっていますし、肌の色から出来るシミの色も予想は付きます。そこらへんも自動でやってくれるようになるんでしょう。



ワタシも顔やメイクの知識やスキルを生かしてずいぶんスタンプツール他のレタッチを勉強してきました。技術の進歩によりそれらが必要なくなっていくもの寂しい話ですが、飽きっぽいワタシの事ですから、レタッチが完全自動化される頃にはまた別のものに興味が出ていることと思います。

まあ、何が言いたいかというと、AIが怖い怖いと言っている裏で知らず知らずのうちにAIにお世話になっているということです。どれだけ怖がっていてもそういう時代が来ることは確定しているわけですからね。それを受け入れていくしかないです。


そういえば産業革命の時もそうだったんですかね?

自分がやっていた仕事がすべて機械に奪われる恐怖は今以上だったと思います。

ちなみに我が家は代々焼き物を焼いているのですが、戦後は農業用水の土管を焼いていました。今は塩ビに取って代わられましたが、その昔は土管一本一本をろくろで曳いていたんですよ!それが型抜き機の導入で職人が劇的に減り今に至る・・

・・ていうか、ろくろだって大量生産のための機械ですからね。

今でこそ「職人技」なんていうと芸術的な意味合いが含まれていますが、元々職人というのは同じものを大量に作る人という意味のほうが強いです。

もはや人間がいくら頑張っても早さでも正確さでも機械にはかなわなくなってしまいましたが、そんな中でも人間が作る温かみを好む人が少なからず存在します。

それらの人は「人間が作った」という所に価値を見出してくれています。
職人は、「大量に作る」という業務を機械に奪われた結果、「人間らしいものを作る」という方向にシフト出来たともいえます。

メイクアップに関しては最後まで人間が行うとは思うのですが、映像制作においては少しあり方を変える必要があります。コンピューターで一発で表現できる部分に、変なこだわりで時間を使うわけにもいきませんから。メイク業務がコンピューターに置き換えられるところもしっかりと見届けたいです。

そしてその後コンピューターで行うメイクアップは誰でもできる技術になりダンピングされる時代が来るでしょう。

そうなったときにペンタブをブラシに持ち替えたいなと思います。


人間が出来るようなことは機械やAIがすべてできる、という時代がいつかは来ます。
そんな時代に人間が生きるには人間らしい仕事をするしかないです。